よくわかるコラム

廃業は社会へのバトンタッチ

  • 事業再生コラム
2021.06.10

数年前でしたか、私の近くのクリーニング店が廃業しました。

自宅から自転車で2分程度でしたし、何より日曜日営業しているので、そのお店を利用していました。平日は帰宅が遅いので出しに行けないのです。

そのお店は年配のご夫婦がやっておられて歴史は長そうでした。そのうちご主人が亡くなり、奥様だけでやっておられましたが、とうとう廃業を決められたそうです。

困りました。近くには日曜日も営業している他のクリーニング店がありませんでした。一時は勤務先のクリーニング店に平日持ち込んでいましたが、通勤時にワイシャツやスーツを運ぶのは難儀しました。

その後、転居したこともあり、近くに日曜日も営業しているクリーニング店が見つかり、今はそこを利用しています。

廃業したそのお店には、たくさんのお客様がついていましたから、閉店はもったいない。

ご親族で誰が引き継ぐ人がいれば、事業承継ができたのですが、いらっしゃらなかったのでしょう。

あるいは、同業他社などに店舗を売却する、いわばM&Aということも考えられますが、買い取ってくれる事業者が見つからなかったのでしょうか。

もったいないですね。

もっとも、このように単純に廃業しても、何もかもなくなるわけではありません。

廃業したそのお店を利用していたお客さんは、私と同じように、どこか別のクリーニング店を探して利用しているはずです。

近くのクリーニング店が閉店したから、クリーニング店に出すのをやめようという人はほとんどいません。

このことは、他の店舗や事業者も同じです。

廃業した店舗や事業者の顧客は、どこか他の店舗や事業者を探してそこから買うようになります。

仕入業者などの取引先も、別の取引先と取引を始めます。

自分の会社がやっていた商売は、社会のどこかの店舗や事業者が引き継いでいるのです。

決してなくなってしまうわけではありません。

事業承継の場合は、事業を引き継ぐ親族などがその事業をそのまま丸ごと引き継ぎます。

M&Aの場合は、事業を買い取った同業他社やスポンサー企業がその事業をそのまま丸ごと引き継ぎます。

廃業は、その事業をそのまま丸ごと引き継ぐわけではなく、分散してしまいますが、世の中のどこかの人に事業を引き継いでいるのです。

この社会に、次の世代に引き継いでいるのです。

廃業を前向きに捉えましょう。

若い世代に繋げましょう。

社会へのバトンタッチ

それが廃業です。

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